環境のために、パッケージ会社が挑戦した紙作り

“chakoro”は、クラウンパッケージの環境にやさしい紙と、株式会社ホワイトハウスにて設計いただいた美しく無駄のないダンボールに梱包されて配送されることで完成しています。

今回は、chakoroのパッケージのこだわりのひとつである「紙」の成り立ちをお伝えできればと思います。

「パッケージコミュニケーション」を掲げ、人と人、環境と人を結ぶコミュニケーションツールとしてパッケージ製造を行う株式会社クラウンパッケージ。ヤシや笹、さらにお茶(!)といった画期的な原料を使った環境にやさしい紙が生まれるまでの物語を、広報室の八木野さまに伺いました。

廃棄素材を個性豊かな紙製品に

——現在クラウンが提供している環境に配慮された製品について教えてください。


八木野さん:「スマートパピエ®」というシリーズです。一度役目を果たした素材を紙の原料として再利用したエコロジーペーパーなのですが、現在7つのラインナップがあります。初めに作ったのはパーム油を製造する過程で生じるヤシカサを配合した「パームヤシックス®」で、以降、漢方の製造過程で生じる笹の葉繊維を配合した「ササックスグリーン®」、緑茶飲料を製造する時に生じる茶殻を配合した「ティーリミックス®」とラインナップを増やしてきました。

使用している原料は、どれもこれまでは廃棄されていたものです。
例えばヤシックスは、当時環境にいいと言われていたパーム油を絞ったカスが行き場を失って捨てられているということを知って、紙の材料に使えないかと試行錯誤した末に製品化しました。

 

ササックスは笹の搾りかすを使っています。笹のエキスを使った漢方薬があるんですが、その漢方薬を作る会社からご相談を受けたのが開発のきっかけです。エキスがとれた後に残った笹は捨てられていて、相当な量を焼却処分している、しかもエキスを搾り取った笹は湿っているので焼却も大変で、重油を使わねばならず環境に良くないのだと。これをなんとかできないかということで開発に着手しました。その会社は、出来上がったササックスを薬の販売店に送っている機関紙などに使ってくださっています。

——ティーリミックスは伊藤園さんの茶殻を使用しているんですね。

八木野さん:はい。伊藤園さんは元々廃棄物の削減に対する意識が高く、茶殻のリサイクルに力を入れていらっしゃいました。その一環として私たちと一緒に茶殻を使った紙製品の開発に取り組んでくださり、ヤシや笹のノウハウを活かしながら、約1年の開発期間でティーリミックスが完成しました。茶殻には抗菌や消臭の効果のある有効成分が含まれているので、このティーリミックスにも抗菌・消臭のような効果があるんですよ。

chakoroで使っていただいているのもこのティーリミックスですね。

 

革新的な紙の開発への道のり

——本来紙になるはずではなかったものを紙に使うのは難しいのではと思ったのですが、開発はスムーズに進んだのでしょうか?

 

八木野さん:いえ。やはり難しかったですね。開発は製紙工場さんと共同で行ったのですが、一般的な紙の原料になる木以外のものが混ざった「混抄紙(こんしょうし)」に対して抵抗を示されることも多くて。

製紙工場さんからすると、効率や品質が低下してしまうおそれがあるので、その反応は当然のことだったと思うんです。いつもは真っ白でチリ一つない紙を作っていらっしゃるわけですから、いろいろ入った紙は不良品という認識なんです。製紙の機械も異物が入らないように特化して作られていて、異物を検知するとセンサーが反応してベルが鳴るんです。初めの製品を作った時は異常検知ベルが鳴り続ける中で作っていただきました。

現場の職人のみなさんにとっては、普段とは違う脳を使うような作業だったと思います。毎日工場に通ってみなさんと会話をして、少しずつ理解していただけるようになりました。その後も何度も試作を重ね、製品化に漕ぎ着けました。

 

環境破壊の現場で抱いた思い

——そんな難しい状況の中でも諦めずに開発を続けられたのには、どんな原動力や思いがあったのでしょうか。

八木野さん:最初はあらゆるお客さまのご要望に応えたい、お客さまを喜ばせたいという気持ちでした。

最初の製品の開発を始めた当時は、結婚式などの場でお皿やコーヒーカップなどが引き出物として使われるようになりはじめた頃で、その引き出物の箱をダンボールで作れないかという動きがあったんです。それで、ダンボールでありながら柄の入った「美粧ダンボール」を作りはじめました。

そのうちにさらに意匠性のあるものをできないかと考えるようになって、後のスマートパピエ®の前身が誕生しました。プレーンな箱だけでなく、雲母が入ってキラキラしていたり、銀紙や繊維が入っていたり、そういった見た目の点でバリエーションがあると、もっとお客さまに喜んでもらえるんじゃないかと。なので当時はいろんなものを混ぜてみていましたね。みかんジュースやりんごジュースの搾りかす、蕎麦殻、リサイクルした牛乳パック...とにかくいろんなものを試しました。

そうして混ぜてもうまくいく原料、うまくいかない原料の知見が蓄積されてきていた頃に、先ほどお話ししたヤシックスの開発のきっかけとなったパーム油の光と影について知りました。そこで、パーム油廃棄の現場だった東南アジアに行って紙をつくりたいと社長に直談判して、ヤシックスの開発がスタートしたんです。

なので、開発がスタートした当初は、面白い製品を作ってお客さまを喜ばせたり、あらゆるニーズにお応えすることを目指していたんです。それが、開発を続けたり、東南アジアで環境破壊の現場を目の当たりにしているうちに「環境のためにできることをしたい」という思いが強くなって、今に至ります。

——今ではダンボールマークなどの認証も取得されていますよね。

ダンボールマークは国際ダンボール協会というところが作ったもので、このマークが入っていれば、世界100か国共通でリサイクルが可能になるんですよ。そもそも日本はダンボールの95%がリサイクルされている優等生な国なんですが、どこの国でもリサイクル可能になると良いなと思って取得しました。

商業的にも “持続可能” な未来へ

 

——環境のために、今後力を入れていきたいことはありますか?

商業的に価値を持たせて、持続的に販売できる仕組みを作ることです。この数十年で技術的にはかなり進歩していろんなものが作れるようになりましたが、長続きさせるためには工業製品としてランニングさせる仕組みが必要だと感じています。

材料の安定供給や保管場所の確保ももちろん重要ですし、普通の紙より手間がかかっている分の高い価値を認めてもらって、相応の価格で販売できるようになることも必要です。

技術的な開発のフェーズとはまた異なった難しさがあると思いますが、様々な協力会社さんやお客さまとも一緒になって、持続可能な社会の実現のために貢献していきたいと思っています。

 

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