fromで取り扱うプロダクトの生産に携わる方々にものづくりの背景をお伺いする、from Magazine 作り手インタビューシリーズ。
高知のヒノキを主役に、ウッドチップやエッセンシャルオイルなどを開発・販売する SUNDAY MARKET(サンデーマーケット)の家竹佑輔さんは、東京でアパレルや雑貨の仕事に携わったのち、Uターンしてブランドを立ち上げたという経歴の持ち主です。インタビュー前編では、地元の高知に帰って土佐ヒノキに出会い商品開発を進めるに至った経緯、そして開発のこだわりについてお伺いしました。
聞き手:yuki shinohara / megumi endo / yui sakida (from by nae Inc.)
高知のヒノキのよさを県外に向けて発信したい
SUNDAY MARKET代表 家竹佑輔さん:
高校生のときに古着屋のアルバイトを始めて以降、東京でアパレルを約8年ほど経験し、雑貨の営業を経て、地元の高知にUターンして独立しました。
アパレル勤めの中で、東京や石川、名古屋など色々住んでたんですけど、やっぱり地元に戻りたいなと思って。
高知って働く場所がないくらい田舎なんで、自分で働く場所を作らないといけないと思って、雑貨営業のノウハウを勉強して、高知県に持って帰って、個人事業を始めたんですね。
高知県のイメージってだいたい食が多いんです。鰹のたたきだとか。ゆずとか、お酒とかですかね。そういったすでに定着したもの以外も発信していきたいと考えていた時に、木材関係、ヒノキだと思いました。
高知県は県土の89%が山、残りの11%の中に人が住んでいるようなところで。だけど、その山を整地する人、切り子の人はどんどん少なくなってるんですよね。高知県って陸の孤島と呼ばれていて、技術的にはすごく尊敬できるものを持ってるのに、県外や世界に向けて発信しようという方が少ない。自分がそこの架け橋になれればいいなと。
僕自身が何か機械を使えたりするわけではないけど、アパレル・雑貨営業をやってきた経験を生かして、高知のヒノキを、こんなにいいものがあると多くの人に知ってもらいたいなと思ったのが、SUNDAY MARKETのはじまりです。
---現在のようなケア商品での展開っていうのはそのあたりから考えられていたんですか。
そうですね、それで妻を巻き込んで。
今はちょうどよく分担されています。こういった窓口や営業は僕が担当というか、口と足を使うことは僕がやってて、頭と手を使うことは妻がやってくれています。ちょうどお互いができないこととできることがピッタリハマって。
---奥様ももともと企業の代表か何かをされていたんですか。
いえ、妻ももともと東京の会社で働いていたんですけど、20代中盤ぐらいから「バックパッカーをしたい」って言って会社を辞めて、半年ぐらい南米でバックパッカーをした後、高知に帰ってまた会社に勤めていました。僕は高知でその時に出会って、「こういう仕事してて、一緒にやらん?」みたいな感じで一緒にやりはじめました。
---高知で出逢われたんですね。それも面白いですね。
妻と二人三脚、ゼロからのケアブランドの立ち上げ
---ゼロからケアブランドを立ち上げるのは結構大変だったかなと思うんですけども、最初から製法とかも含めて自社でやってたんですか。
化粧品登録とかが自社でできないので。認可されてる工場っていうのがあるんですけど、そこでないと化粧品登録できないとかってあるんですよ。
自社だとそこまで行くのに施設を整えたり機械揃えたりとかしなきゃいけないので、そこはネットでいろいろ探して、「ここにお願いしよう」っていう工場を沖縄にみつけました。
できれば高知県内で探したかったんですけど、なかなかロット数とかの条件が希望とマッチするところがなくて。
沖縄の工場にお願いしたことで一番時間がかかったのが、サンプルのやりとりでしたね。
弊社の商品は高知の自然をイメージして4つの香りを作ってるんですけど、その香りをオーダーしてつくるのに、口頭で「こういうものを入れてほしい」「全ての香りに土佐ヒノキをブレンドしてほしい」というのを話すんですけど、なかなか口でイメージを伝えるのって難しいじゃないですか。
何回か試作してもらって、それを沖縄から高知に送ってもらって、実際に嗅いで、「もうちょっとすっきりした方がええな」「ヒノキの香りを強くしたいな」とかそういう細かい調整を電話やメールとかでのやり取りを何度もさせてもらって、なんとか完成しました。ここでできた4種類の香りがうちの商品のベースになるんで、これだけで完成するのに1年ぐらいかかったんですよ。結構大変ではあったんですけど、ベースさえできてしまえばある程度ものに落とし込んでいけるので、初めは時間がかかったんですけど、そこからは順調に進んでるのかなって思いますね。
高知の自然をイメージした香りの展開
---最初に取りかかったのはどの商品だったんですか?
一番初めはヒノキチップスですね。そこから紐付けてヒノキのオイルをいろんなものにブレンドして、高知をイメージした香りに落とし込んで、今ようやくある程度ブランドとして形になってきたかな。
---僕の自宅でも今ヒノキチップスが入ったサシェをクローゼットに入れて、そこにSUNの香りのエッセンシャルオイルを垂らして入れているんですけど、いいですね。
ありがとうございます。
---朝クローゼットを開けたときの匂いでテンションが上がります。
いいですよね。
ヒノキチップス サシェ
高知の「土佐ヒノキ」と他のヒノキの違い
---ヒノキって防虫効果もあるんですよね。
そうですね。なかなかヒノキって効果効能って謳えないんですよね。
---確かに効果効能系って商品として宣伝するの難しいですよね。
めちゃくちゃ難しいですね。昔から日本人はヒノキの家とかヒノキ風呂とか馴染みがあると思うんですけど、先ほどおっしゃってくれたように防虫効果がありそうだということで、江戸時代頃にはムカデ予防として使っていたという説があるらしいんです。防虫出来て香りもいい。プラス、木は呼吸をしているので加湿や除湿にもなるんですよ。
ただ、産地や伐採する時期によって効果が大きく変わってくるのでなかなか「ヒノキ」として括った場合の効果効能は出せなくて、どこ探しても出てないですね。なので、「昔からこういう効果があると言われてますよ」と、断言しない形でお伝えしています。
---土佐ヒノキの特徴だったり、他のヒノキとの違いはどういったものがあるんですか?
開発にあたって土佐ヒノキは他と比べて何が違うのかなっていうのをすごい思って、他の有名なヒノキと香りを比べてみたんです。
土佐ヒノキの特徴でもある、油分が強く柑橘系の香りが広がる感じが、個人的には1番好みでした。
---四国っぽいですね。
そう、それもなんでか分からなくて、元々の土壌がいいのか、四万十川だったり仁淀川だったりの第一級の綺麗な川があるおかげだったりとか、あと日射量や年間雨量とか、いろんなことが重なって重なって、こういう油分の強い香りが出てるみたいで。でも明確な理由は誰にも分からないんですよ。「なんでなんでやろうね」「なんかわからんけど香りいいよね」みたいな感じなんですよ。
でもおそらく気候、湿度とか、いろんなことが組み合わさっていい香りになってるらしいっていうことですね。
地元・高知への思いと、環境問題への取り組み
---柑橘系寄りの香りは一層生活空間には合いそうな感じがありますね。
そうですね。自然に溶け込みやすいというか。
今人気で売れている雑貨やルームスプレーって香りが強いと思うんですけど、僕はそれが服についたまま車に乗ったときに、自分で運転してるのにも関わらず2時間くらいで酔ったことがあるんですよ。個人的にもプライベートで遊ぶときにはサーフィンしたり、釣りしたり、キャンプしたりと自然の中で遊ぶことが多いこともあって、人工的に作られたものがちょっと苦手になって。
「高知=ヒノキ」っていうイメージは今は多分出てこないと思うんですけど、うちのSUNDAY MARKETってブランドを通して、「高知のヒノキってこんないい香りするんだ」「コロナが収まったら高知行ってみたいな」とか、そう思ってくれたらいいなっていうのがあって。
いい香りのヒノキを嗅ぎながら、キャンプしてビール飲みたい、とか、そういうふうに思ってもらって、遊びに来てくれたらいいなっていう思いが一番ですね。
---そこがこの商品の目指したいところなんですかね。
そうですね。
---お客さまからはどんな声をもらうことが多いですか。
「今までいろんなヒノキを使ってみたけど、SUNDAY MARKETさんの商品が一番良かったです」っていうお声をいただいたり、都会に出られた高知県民の方が「地元のものだから買ってみよう」っていうことで気に入ってくださることも結構多いみたいで。「高知を思い出しました」とかって言ってくださるのは、やっぱり僕らとしては一番ありがたいし、嬉しいことです。
---高知の自然を香りの展開もされてるっていうのも、より一層故郷を思い出しやすい部分になっているんですかね。
---あとデザインですね。すごくシンプルで、こだわりを持ってやられてるのかなと思うんですが。パッケージ本体は瓶で、普通は上のキャップ部分はプラスチックで作ったりするのが一般的だと思うんですが、SUNDAY MARKETさんのは竹ですか。
そうです、竹です。
---梱包も含めいろいろと工夫があるなと思ったんですけども、この辺りのこだわりについてもお伺いしていいですか。
自然の素材をなるべく使いたい、ゴミを減らしたい、という思いがあります。例えばサーフィンする時に、汚い海でやりたくないじゃないですか。
---はい。
魚釣りしてても、やっぱり汚いより綺麗な方がやっぱりいいんじゃないですかね。キャンプに行くときも、山にゴミが落ちてるよりは綺麗な方が気持ちがいいですし。
そういうところも自分たちの中で思うことがあって。
サーファーは、ビーチクリーンっていって海に入る前にゴミを拾う文化があるんですよ。
綺麗な海で遊びたいですしね!
僕らが動いたところでどれだけゴミが減るかといったらそう変わらないとは思うんですけど、できることからやっていこうということで。
まず自分たちがゴミを減らすために、使い終わった後でも繰り返し使っていただけるようにシンプルで邪魔にならないパッケージにしました。「これパッケージかわいいから」って、うちのものじゃなくても中身だけ入れ替えて使っていただいてももちろんいいです。
それから商品に外箱も付けていなんです。配送時にビンが割れてしまうかもといったデメリットはありますが、その分しっかりと梱包してお届けしています。
外箱って1番はじめに捨てるものじゃないですか。自分で買ってもギフトでもらっても。
そういった部分もゴミを少なくできるなと思い、外箱なしで販売させていただいております。
なるべくゴミになるものを少なくした状態でお客さんに届ける。お客さんの元でも再利用できるような素材・デザインにする。
再利用に関しては強要はもちろんできないので、お好きにしてくださいって形なんですけど、実際にインスタで「使い終わったから色付きの液体の化粧品入れてみた」といった声もあったりして、そういう方が1人でもいてくれたら「よかったな」って思います。
---そういうのを見ると嬉しくなりますね。
そうですね、考えてよかったなって。
---僕らも最初展示会場で家竹さんと初めてお会いしたときに、そういう思いを語ってくれて、そこに共感してfromで取り扱いたいとお話しさせていただいたんです。
---デザインもご自身でなさってるんですか?
デザインは全部妻がやってます。
---奥様がなさってるんですね。元々そういったデザイン業をなさっていたんですか。
いえ、全然違います。だから、イラストレーターとかフォトショップとか、全部独学でやりながら覚えてくれました。元々のパソコン業務は結構得意だったみたいで。
---すごいですね。一層思い入れが強いですよね。
そうですね。
---家竹さんがご自身で商品使われるときにはどんな風に使っているだとか、おすすめの使い方とかってお伺いできますか。
そうですね。僕はめちゃくちゃ乾燥肌なんですけど、それでもうちの商品は使えます。お風呂上りとかサーフィン、釣りの後とかに、ハンドクリーム・ボディーオイル、スキンバームなんかを使っています。
あと、ヒノキチップをいつも家の玄関や階段の踊り場に置いていますね。嫌なにおいも取ってもらいやすいし、かつ、フワッとヒノキの香りもするので。
---いいですね。
めちゃくちゃいいですね。あとさっき話に出た、クローゼットにかけておけるアロマフックっていう商品があるんですね。
ハンガーみたいになっててそのままクローゼットにかけれるっていうものなんですけど、ヒノキの消臭効果を利用して嫌な臭いを取れる、プラスアルファ、お好きな香りがあれば、くぼみの部分にエッセンシャルオイルを垂らすことで香りづけもできるんですよね。さっき篠原さんがおっしゃってたみたいに、サシェにオイルを垂らしておくとクローゼットを開けた瞬間にいい香りがするっていう、それと同じことです。これはそのクローゼット専用で作ったもので、うちはクローゼットが大きくて2m半ぐらいあるんで、これを4つ置いてます。最近は無いとダメになってきました。
---いいですね。今はサシェはfromで取り扱ってるんですけど、アロマフックも欲しくなってきました(笑)
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